雨ふる丘

 村のはずれに一本の大きな木を持った丘がある
 その丘は見晴らしが良くて森や村を一望することができる
 朝には小鳥達が集まり一日の始まりを知らせた
 昼には子供たちが鬼ごっこや木登りをして遊びんだ
 夜には動物達の寝床になった
 そんな場所だった
 人も動物達も丘が好きだった
 丘は皆の笑顔が見れて幸せだった
 
 でも、丘は幸せじゃなくなった
 
 ある時から子供たちを見なくなった
 村に人さらいが出て子供たちは村の外に出なくなった
 ある時から動物たちを見なくなった
 丘の周りの森が切り開かれて動物達の住む所が無くなったから
 
 丘は悲しかった
 毎日皆の事を思っていた
 そしたらぽろりと涙が出た
 皆に会いたくて涙が出た
 ひとりぼっちが寂しくて丘は泣いた
 毎日毎日泣いた
 
 ある時から丘には雨が降るようになった
 丘が流した涙の分だけ雨が降った
 人も動物もますます丘に近づかなくなった
 雨に濡れるのが嫌だから丘から離れた
 丘はますます悲しくて寂しくてより激しく泣いた
雨はますます強くなった
 
 
村外れに一本の大きな木を持つ丘がある
雨の止まない誰も近づかない丘がある
ただ一本の大きな木はその雨を受けながら
「たまには晴れないかな」って思ってる